設備投資を検討するとき、多くの農業者がまず「補助金は使えるか」を考えます。補助金は返済不要で魅力的ですが、採択されるとは限らず、対象機種も限定され、交付決定前に着手できないといった制約があります。「補助金が取れなければ導入しない」という判断で計画が止まってしまうと、機械の更新遅れによる故障や作業中断を招きかねません。

実は国自身も、補助金一本ではなく多様な手段を推奨しています。農林水産省は、集落や組織等の単位での農業機械の共同利用等のシェアリングやリース、作業の外部委託といったコスト低減の取組も組み合わせながら、規模の大小にかかわらず農業現場の実態に即してスマート農業技術の実装を進めていくことが重要だとしています。

本記事では、補助金に依存しない設備導入の選択肢として「リース」「中古農機」「共同利用・シェアリング」の3つを整理し、それぞれのメリット・注意点・向いているケースを解説します。

なぜ「補助金前提」で止まってはいけないのか

補助金にはいくつかの構造的な制約があります。国や地方自治体へ申請を行い、条件を満たして審査が通ってはじめて受給できる制度であり、申請条件や手続きが難しいという声もあります。また、補助事業では交付決定を受けるまでに着手すると、その間に生じた損失は自らの責任となるなど、スケジュール面での制約もあります。

対象機種にも限定があります。たとえば、ものづくり補助金では汎用性のあるトラクターやビニールハウスなどは対象外になるといった注意点があります。こうした制約により、「補助金ありき」で設備計画を立てると、不採択や対象外というだけで計画全体が前に進まなくなってしまいます。

ここで一つ整理しておきたい点があります。本記事で扱う「補助を前提にしない」とは、「補助金を一切使わない」という意味ではありません。後述するリースや共同利用は、補助制度と併用できる仕組みも用意されています。本記事は「補助が取れない、あるいは対象外という場面でも設備を確保する手段」を扱うものとお考えください。

選択肢① リース ― 初期投資を抑えて借入枠を温存する

リースは、リース会社が農業者に代わって農機具販売店から機械を購入し、農業者に貸し出す仕組みです。リースは借入や一括購入と比べて初期の資金負担を抑えられる点が大きな特徴です。

リースのメリット

リースの利点は、初期投資の軽減だけではありません。アグリウェブに掲載された水稲農家Kさんの事例では、自己所有ではないリース物件であれば、リース期間の終了が機械更新の後押しとなるため、メンテナンスコストがかさむ前に機械を更新するサイクルが作れるとされています。Kさんは7年でコンバインを更新する循環を作り、整備費用の低減や、高性能機械の導入による作業効率アップにつながりました。

そのため、一定の稼働時間を超えて使用するとメンテナンスコストがかさむ農機具や、陳腐化や技術革新が速い農機具などは、「リース期間=更新サイクル」とする通常リース契約が向いているとされています。

契約タイプの違い ― 返却型と購入選択権付き

通常のリースは契約終了後に2つの選択肢があります。1つは、契約終了後にリース物件をリース会社に返却する方法です。もう1つは、購入できるリースです。フォークリフトをリースで導入したキャベツ農家Mさんの事例では、生産規模拡大に向けて借入枠を温存するためにリースを選び、長く使用したいという意向から、最終的に自身で所有できる購入選択権付きリースで契約しています。このように、農機具の使用実態や想定使用年数に合わせて契約方法を選ぶことができます。

補助制度との併用

リースは補助制度と併用することも可能です。補助事業を活用しても通常のリース契約と仕組みはほぼ変わらず、補助事業を活用した場合は、物件代金から補助金分を引いた金額でリース料を算出のうえリース契約を締結します。補助事業を活用すれば、初期の資金負担をさらに抑えて物件導入が可能となります(2分の1補助の場合)。

制度面では、農林水産省の「農地利用効率化等支援交付金」において、地域計画の目標地図に位置付けられた者を対象に、農業用機械のリース導入が支援されています。補助率は、リースの場合は定額(導入する農業用機械の取得額相当7分の3以内)で、補助上限額は1,500万円とされています。

選択肢② 中古農機 ― 相場を理解して賢く買う

新品より安く導入できる中古農機も、有力な選択肢です。ただし、近年の市場動向を理解したうえで検討する必要があります。

2024年以降の市場動向 ― 「台数が少ないのに価格が高い」

近年、日本の中古農業機械市場では「台数が少ないのに価格が高い」という現象が起きています。背景には、長い間、新しい農業機械があまり売れず、多くの農家が機械の更新を先送りにしてきたという事情があります。しかし最近、米価の上昇などにより農家の経営状況が改善し、機械を更新しようと考える人が一気に増え、新品の需要が急増して納期が長くなるケースも増えています。

一方で、長年更新されていなかったために下取りに出される機械の多くは年式が古く状態が良くなく、国内の中古市場では再販売が難しいため、商品として使える台数が限られています。その結果、すぐに使える状態の良い中古機械には買い手が集中し、状態の良いトラクターやコンバインの価格は大きく上昇しています。

価格高騰の要因は複合的です。2024年以降、円安の進行で部品や素材の輸入コストが上昇し、原材料費・物流費の高騰で製造コストが増大、半導体不足や需要増加による納期遅延で新品農機が品薄となり、さらに海外バイヤーによる中古農機具の需要増が重なっています。実際、日本農業機械化協会によると、国内の農機全販売台数における中古販売率は、トラクターが2021年に27.4%となり、1987年の調査開始以降初めて20%台となりました。田植え機は30.4%、コンバインは39.6%で、背景には農家人口の減少があるとされています。

中古の利用実態はまだ少ない

コスト削減の観点では、価格が安い中古農機具を購入するという選択肢は有効です。減価償却費は固定費であり、安く購入できればより一層のコスト削減につながります。

農業利益創造研究所が普通作の個人事業農家3,179件の減価償却資産データを集計した調査によると、中古農機具(耐用年数が7年未満のトラクター、田植機、コンバイン)を利用している普通作の経営体は14.8%でした。中古自動車の販売業者が多数存在している状況と比べると、中古農機具の利用は意外と少ないことがわかります。また、経営規模が大きくなるほど中古利用経営体の比率は徐々に増えますが、収入金額規模で3,000〜5,000万円(稲作なら約20ヘクタール)から減少します。大規模経営は新品を購入し、故障のリスクを避けてメンテナンスしながら長く使うことを意識している経営者が多いのかもしれない、と分析されています。

中古導入の注意点

中古を検討する際は、市場の状況を踏まえた注意が必要です。すぐに使える状態の良い中古機械への需要は非常に高まっており、良質な中古機には買い手が集中します。中古農機を探す際は、価格だけでなく機械の状態や整備状況をよく確認し、早めに情報収集することが重要とされています。SDGs・資源循環の観点でも、中古農機具のリユースはコスト削減だけでなく、資源の循環と生産コストの低減に貢献する取組といえます。

選択肢③ 共同利用・シェアリング ― 稼働率を上げて1台あたりコストを下げる

高価な機械ほど、1台を複数で使う「共同利用・シェアリング」の効果が大きくなります。農業支援サービスの一つとして、農業機械のシェアリングは、農業者に対してサービスを提供することで対価を得る業種として位置づけられています。

実証事例 ― 岡山県の広域シェアリング

農林水産省が紹介する岡山県の広域シェアリングの事例では、南北約100km、標高差約500mの広域で、水稲の極早生から晩生品種の田植え、収穫を行うことで、作業競合せずにスマート農業機械をシェアリングできるとされています。この取組では、機械稼働率の向上が可能であると報告されています。

生産組織からの聞き取りによると、メリットは高価なスマート農機を購入せずにコストを抑えて利用できることであり、デメリットはスケジュール調整や機械損傷への対応などが挙げられました。料金設定、スケジュール調整、機械故障への対応などにあたっては、機械利用組織を作るとともに、シェアリングの運用を調整する第三者機関が必要であるとされています。

シェアリングのチーム組成の考え方について、アグリウェブのコラムでは、農機の利用時期が重ならないように、早生・中生・晩生の品種を扱う農家たちで構成されることが理想であり、それぞれの農家から必要なもの(ニーズ)を申告してもらうことが起点になると解説されています。稲刈り用のコンバインは収穫期に利用が集中し、近隣地域の複数の農家で収穫時期が重なるため、作期をずらす工夫がシェアリング設計の鍵となります。

「持たない」選択肢 ― 農業支援サービスの活用

共同利用の発展形として、機械そのものを持たずに外部委託するという選択肢もあります。農業支援サービスとは、農業現場における作業代行やスマート農業技術の有効活用による生産性向上支援等、農業者に対してサービスを提供することで対価を得る業種のことをいい、データ分析やドローン散布等の作業受託、農業機械のシェアリング、農業現場への人材供給等が含まれます。

農林水産省は、「食料・農業・農村基本計画」に基づき、ドローンや自動走行農機などの先端技術を活用した作業代行やシェアリング・リースなどの次世代型の農業支援サービスの定着を促進しています。機械を所有せず、必要な作業を必要なときに委託することで、導入コストそのものを回避できるのがこの選択肢の特徴です。

3つの選択肢をどう選ぶか ― 比較で整理する

ここまで見てきた選択肢を、購入と並べて比較すると、それぞれの位置づけが整理できます。以下の表は、本記事で参照した各文献の記述に基づいて整理したものです。

選択肢初期投資所有権主なメリット主な注意点・条件
購入大きいあり自己所有として長く使える資金負担・借入枠を消費
リース小さい返却型はなし/購入選択権付きは取得可初期負担を抑え借入枠を温存、更新サイクルを作りやすい使用実態に合わせた契約タイプの選択が必要
中古新品より小さいあり価格が安く減価償却負担を軽減良質な中古は品薄で競争が激しい、状態・整備状況の確認が必須
共同利用・シェアリング小さい(購入不要)なし(共有)高価な機械を購入せず稼働率を上げて利用スケジュール調整・機械損傷対応、調整する第三者機関が必要

選ぶ際の考え方を整理すると、次のようになります。技術革新が速い機械やメンテコストがかさむ機械はリースで更新サイクルを作る、汎用機など補助対象外になりやすい機種はコストを抑えて中古で確保する、高価なスマート農機で単独では稼働率が上がらないものは共同利用・シェアリングで分担する、という組み合わせが考えられます。

共同利用については、集落や組織等の単位での農業機械の共同利用等のシェアリングやリース、作業の外部委託といったコスト低減の取組を組み合わせることを国も推奨しており、一つの手段に絞るのではなく、機械の特性に応じて使い分けることが現実的です。

まとめ ― 補助金は「前提」ではなく「選択肢の一つ」

補助金は返済不要という大きなメリットがある一方、申請条件や手続きの難しさ、対象機種の限定、スケジュール上の制約があります。「補助金が取れなければ導入しない」という判断で止まってしまうと、機械の更新遅れが経営に影響しかねません。

本記事で紹介したリース・中古・共同利用は、いずれも補助金に依存せず設備を確保する手段です。リースは補助制度との併用も可能であり、共同利用やシェアリング、作業の外部委託は国の政策方向とも整合しています。補助金を「選択肢の一つ」と位置づけ、複数の手段を知っておくことで、不採択でも計画を止めずに前へ進めることができます。

参考文献

農林水産省「特集2 現場への実装が進むスマート農業」
https://www.maff.go.jp/j/wpaper/w_maff/h30/h30_h/trend/part1/chap0/c0_2_00.html 農林水産省「農地利用効率化等支援交付金(令和7年度)」
https://www.maff.go.jp/j/keiei/sien/R7_nouchiriyou/index.html 農林水産省「農業支援サービス関係情報」
https://www.maff.go.jp/j/seisan/sien/sizai/service.html 農林水産省「次世代型農業支援サービス」
https://www.maff.go.jp/j/kanbo/smart/nougyousien.html 農林水産省「シェアリングによるスマート農業技術の導入コスト低減の取り組み ― 岡山県における広域シェアリング」
https://www.maff.go.jp/j/kanbo/smart/forum/R2smaforum/rice/seika87.html アグリウェブ「補助事業の活用について シリーズ『農機具導入の新しい選択肢』Vol.10(JA三井リース)」
https://www.agriweb.jp/column/2151.html アグリウェブ「『購入』と『返却』リース終了後の選択肢 シリーズ『農機具導入の新しい選択肢』Vol.4」
https://www.agriweb.jp/column/1812.html アグリウェブ「見知らぬ農家同士の”課題”を共有する農機シェアリング シリーズ『アグリ5.0に向けて』Vol.5」
https://www.agriweb.jp/column/1576.html リサイクル通信「中古農機流通の今 国内縮小傾向により海外輸出が加速」(2024年9月10日)
https://www.recycle-tsushin.com/news/detail_10075.php 安藤商事「日本の中古農機市場で今、何が起きているのか?」
https://antei.co.jp/(ブログ「日本の中古農機市場で今、何が起きているのか?」) 農キング「【2025年】中古農機具が高騰!今が”売り時”の理由」
https://nouking.com/blog/column_4/ 農業利益創造研究所「中古農機具はSDGsにつながる? 中古農機具販売『農機具王』を紹介」
https://nougyorieki-lab.or.jp/facility/10349/ 農林水産省「農機具の購入に使える補助金(ものづくり補助金の対象要件に関する記述)」/農機具王「農機具の購入に使える補助金7選」
https://noukiguou.com/subsidy/