農業用廃プラの保管・分別・回収実務|処理費を抑えつつ法令違反を避ける方法

農業用ハウスの被覆資材、マルチ、ポット、収穫コンテナ――これらの使用済みプラスチックは「産業廃棄物」であり、農家自身が処理責任(排出事業者責任)を負います。野焼きなどの不適正処理には重い罰則がある一方、保管・分別・回収の実務を工夫すれば、適正処理を守りながら処理費を抑えることも可能です。本記事では、現場実務に絞って「コスト削減」と「法令遵守」を両立させる方法を解説します。

まず押さえる:農業用廃プラは「産業廃棄物」である

農畜産業の現場からは、さまざまなプラスチックが排出されます。農林水産省の資料によれば、農畜産業分野から排出される廃プラスチックには、農業用ハウスやトンネルの被覆資材、マルチ、苗や花のポット、牧草等のサイレージラップなどがあります。

ここで最も重要な前提は、これらの使用済みプラスチックは産業廃棄物であり、事業者である農家が責任をもって処理する必要があるという点です(高知県の事例より)。個人経営の農家であっても、廃棄物処理法上は「産業廃棄物の排出事業者」に位置づけられます。

また、現場では回収体制の地域差という課題も指摘されています。専門紙の報道では、収穫コンテナのようなプラ製品が、自治体によっては廃プラ回収の対象外となっており、農家が処分に難儀しているケースが取り上げられました(日本農業新聞 2024年7月23日付「収穫コンテナ処分に難儀」より、廃棄物管理実務サイトの紹介による)。

【図表1】主な農業用廃プラスチックの種類

区分主な品目
被覆資材農業用ハウス・トンネルの被覆フィルム
栽培資材マルチ、苗・花のポット
畜産資材牧草等のサイレージラップ
その他収穫コンテナ 等

出典:農林水産省「園芸分野から排出されるプラスチックをめぐる情勢」、高知県「こうち農業ネット」ほか

やってはいけない:野焼き・不法投棄の罰則

処理費を惜しむあまり、あるいは回収先に困った結果、絶対に避けなければならないのが「野焼き(野外焼却)」と「不法投棄」です。

北九州市の解説によれば、廃棄物の不法投棄や焼却行為(野焼き)は「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」により禁止されており、違反した場合には5年以下の懲役もしくは1,000万円以下(法人にあっては3億円以下)の罰金、またはこれらの併科という罰則が規定されています。

「農業ならば焼却してよいのでは」という誤解には注意が必要です。確かに野焼きには政令上の例外があり、「農業、林業または漁業を営むためにやむを得ない焼却(稲わらの焼却等)」も例外の一つとして挙げられています。しかし、これらの例外に該当する野焼きであっても、煙やにおいにより近所へ迷惑がかかるなど生活環境に影響を与えるものについては、処理基準違反として指導の対象になります。

つまり、稲わらの焼却が例外にあたるからといって、そこに廃プラスチックやビニールを混ぜて燃やすことは認められていません(津幡町の解説より)。廃プラの焼却は例外の対象外です。

【図表2】野焼きが例外的に認められる主なケースと注意点

政令上の例外(一部)注意点
法令に基づく焼却(伝染病家畜、松くい虫被害伐木等)例外に該当しても、煙・においで生活環境に影響を与える場合は処理基準違反として指導の対象。
廃プラ・ビニールは焼却できない。
国・地方公共団体の施設管理に必要な焼却
震災等の災害対策に必要な焼却
農業・林業・漁業を営むためにやむを得ない焼却(稲わら等)

出典:北九州市「廃棄物の不法投棄・焼却行為の禁止」(2025年1月28日更新)、津幡町「不法投棄・野焼きなどの禁止事項」

保管の実務:後工程のコストは「排出時」に決まる

処理費を抑える出発点は、保管段階での工夫にあります。ポイントは、後工程(分別・再生)のコストは、廃プラを排出・保管する時点でほぼ決まるという考え方です。

日本施設園芸協会は、使用済プラスチックの処理にあたって、環境負荷の低減、資源の有効利用などの観点から、廃棄物の発生を抑制するとともに、再生可能な資源としてできる限り利用することが必要であるとしています。そのうえで、廃棄物を利用可能な資源と捉え、排出抑制(リデュース)、再利用(リユース)、原燃材料としての再生利用(リサイクル)を促進するという基本方針が示されています。

この「資源としてできる限り利用する」を実現するには、排出・保管の段階で汚れや異物を持ち込まないこと、そして次章で述べる品目の混在を避けることが土台になります。

【要確認】産業廃棄物の具体的な保管基準(囲い・掲示板の設置、飛散・流出・地下浸透・悪臭発散の防止措置など)の細目については、本記事の参照文献のスニペット範囲では詳細を確認できていません。実際の保管基準は、お住まいの都道府県・政令市の産業廃棄物担当窓口の案内で必ずご確認ください。

分別の実務:処理費を左右する最大の要素

農業用廃プラの処理費と再生可否を大きく左右するのが「分別」です。特に重要なのが、塩化ビニルフィルムとポリオレフィン系フィルムを区別することです。両者は再生処理のルートが異なります。

農林水産省の資料によれば、塩化ビニルフィルムの再生処理は、床材等へのマテリアルリサイクルが中心であり、ポリオレフィン系フィルムの再生処理は、サーマルリサイクルが中心となっています。また、塩化ビニルフィルム・ポリオレフィン系フィルムともに再生処理割合は7割を超えているとされ、適正な分別が再生利用に直結していることがうかがえます。

【図表3】フィルム種類別の主な再生処理ルート

フィルムの種類主な再生処理の中心
塩化ビニルフィルム床材等へのマテリアルリサイクルが中心
ポリオレフィン系フィルムサーマルリサイクルが中心

出典:農林水産省「園芸分野から排出されるプラスチックをめぐる情勢」(令和6年5月・農産局園芸作物課)
※再生処理割合(塩ビ・ポリオレフィン系とも7割超)は同資料の記述に基づく。詳細な数値は原典でのご確認を推奨します。

そもそも「回収する量を減らす」という選択肢

分別・回収の負担そのものを減らすアプローチとして、生分解性資材の活用も検討に値します。農林水産省の調査では、農業用マルチフィルムは生分解性プラスチックの用途の好例として位置づけられています。回収不要な生分解性マルチへの切り替えは、廃プラの発生抑制につながる可能性があります。

【要確認】生分解性資材は、製品ごとに分解に必要な環境・期間が異なります。導入にあたっては、農林水産省の関連資料や資材メーカーの仕様を個別にご確認ください。本記事では一般的な位置づけの紹介にとどめます。

回収の実務:地域スキームと委託ルールを正しく使う

実際の回収は、多くの地域でJAや市町村、処理公社が中心となって行われています。岩手県の案内では、県内各地域でJAや市町村が中心となって回収処理を行っており、回収時期や回収場所は、お近くのJA、市町村、県の農政担当窓口等に問い合わせるとされています。高知県のように、県の処理公社を通じてリサイクルを行っている地域もあります。

JAが集荷場所を提供する場合の「処理責任」に注意

ここで実務上、誤解しやすいのが「処理責任の所在」です。大阪府のマニフェスト制度FAQによれば、農業協同組合等が農業者の排出する廃プラスチック類の集荷場所を提供する場合であっても、処理責任は個々の事業者(農家)にあり、産業廃棄物の処理に係る委託契約は、個々の事業者の名義において別途行われなければならないとされています。

つまり、JAが集荷の場を用意してくれても、それによって農家の排出事業者責任がJAに移るわけではありません。同FAQでは、集荷場所の提供者がマニフェスト交付等の事務を代行する場合には、その代行について契約書・覚書等で定めておくことが望ましいとされています。

委託契約とマニフェストは「別の制度」

公益財団法人 日本産業廃棄物処理振興センター(JWセンター)の解説によれば、委託契約とマニフェストはそれぞれ趣旨が異なる制度です。整理すると次のようになります。

  • 委託契約書:産業廃棄物の処理を他人に委託する際、まず作成し、委託先の処理業者と締結するもの。
  • マニフェスト:その委託契約書どおりに産業廃棄物が適正に処理されたことを確認するために交付し、処理の流れを確認するもの。

同センターは、排出事業者が果たすべき責任として、委託基準の遵守(書面による委託契約の締結、許可業者への委託など)、マニフェストの交付義務、最終処分までの注意義務(適正な処理料金の負担など)を挙げています。

【図表4】排出事業者(農家)が果たすべき主な責任

責任内容
委託基準の遵守書面による委託契約の締結、許可業者への委託など
処理責任事業活動で発生した産業廃棄物を自ら処理する
管理票交付義務処理を委託する場合、電子マニフェストの登録または紙マニフェストの交付を行う
最終処分までの注意義務発生から最終処分までの適正処理のため、適正な処理料金の負担などの措置を講ずるよう努める

出典:公益財団法人 日本産業廃棄物処理振興センター(JWセンター)「排出事業者責任」

これらの義務(委託基準・マニフェスト・注意義務)に違反し、不適正な処分により生活環境の保全上の支障が生じるおそれがあると認められる場合、排出事業者は支障除去等(廃棄物の撤去など)の措置命令の対象となり得ます。「委託して終わり」ではなく、適正な料金を負担し、処理の流れを確認するところまでが排出事業者の責任です。

処理費を抑える具体策と、活用できる支援

ここまでの内容を、コスト削減の観点で整理します。

  • 保管・分別の前処理で単価を下げる:塩化ビニルとポリオレフィン系を混在させず、汚れ・異物を持ち込まないことで、再生利用ルートに乗せやすくする。
  • 地域の回収スキームを使う:JA・市町村・処理公社の回収を活用する。ただし処理責任は農家自身にある点を踏まえ、委託契約・マニフェストを正しく運用する。
  • 発生量そのものを減らす:生分解性マルチなど、回収不要な資材への切り替えを検討する。
  • 支援策を確認する:農林水産省は、農業由来の廃プラスチック対策に関する事業を実施しています。

農林水産省の適正処理対策のページでは、「農業由来の廃プラスチック対策モデル地域形成事業」などが案内されています(令和7年補正・令和8年当初予算関連)。また、同省の「プラスチック資源循環(農業生産)」ポータルでは、排出抑制、使用済みプラスチックの適正処理、海洋への流出防止などの観点から、資材の製造・流通・利用に関する施策がまとめられています。

【要確認】補助事業の対象者・要件・実施年度・申請窓口は年度ごとに変わります。本記事では事業名の紹介にとどめます。最新の要件は、必ず農林水産省の該当ページおよびお近くのJA・自治体窓口でご確認ください。

まとめ:適正処理とコスト最適化の両立チェックリスト

  • 野焼き・自己焼却はしない(廃プラ・ビニールは農業の例外焼却にも該当しない/重い罰則)
  • 塩ビとポリオレフィン系を分別し、汚れを落として保管する(再生利用ルートに直結)
  • JA・自治体・処理公社の回収スキームを確認する(回収時期・場所は各窓口へ)
  • 処理責任は農家自身にあることを踏まえ、委託契約とマニフェストを正しく運用する
  • 生分解性資材や補助事業も選択肢に入れる

農業用廃プラの適正処理は、法令遵守という「守り」であると同時に、分別・保管の工夫によって処理費を抑える「攻め」でもあります。排出時のひと手間が、コストとコンプライアンスの両方を左右します。

参考文献

本記事の作成にあたり、以下の文献を参照しました。(数値・制度の細部は各原典でのご確認を推奨します)

農林水産省「プラスチック資源循環(農業生産)」
https://www.maff.go.jp/j/seisan/pura-jun/
農林水産省「農業由来廃プラスチック適正処理対策」
https://www.maff.go.jp/j/seisan/ryutu/engei/sisetsu/used_plastic.html
農林水産省 農産局園芸作物課「園芸分野から排出されるプラスチックをめぐる情勢」(令和6年5月)
https://www.maff.go.jp/j/seisan/ryutu/engei/sisetsu/attach/pdf/used_plastic-4.pdf
農林水産省「令和6年度 農業及び食品産業におけるプラスチック削減に係る調査・分析 委託事業 報告書」(2025年3月)
https://www.maff.go.jp/j/plastic/attach/pdf/index-4.pdf
一般社団法人 日本施設園芸協会「農業用廃プラスチック適正処理・資源循環促進」
https://jgha.com/product/estr/
公益財団法人 日本産業廃棄物処理振興センター(JWセンター)「排出事業者責任」
https://www.jwnet.or.jp/jwnet/about/system/responsibility/
大阪府「マニフェスト制度(FAQ)」
https://www.pref.osaka.lg.jp/o120060/jigyoshoshido/report/faq_6.html
北九州市「廃棄物の不法投棄・焼却行為の禁止」(2025年1月28日更新)
https://www.city.kitakyushu.lg.jp/contents/924_10453.html
津幡町「不法投棄・野焼きなどの禁止事項」
https://www.town.tsubata.lg.jp/page/1917.html
高知県「こうち農業ネット:農業用廃プラスチック処理」
https://www.nogyo.tosa.pref.kochi.lg.jp/info/dtl.php?ID=5583
岩手県「農業用廃プラスチック適正処理」
https://www.pref.iwate.jp/sangyoukoyou/nougyou/nougyougijutsu/seisan/1007695.html
廃棄物管理の実務「農家の産業廃棄物委託基準」(日本農業新聞 2024年7月23日付報道の紹介を含む)
https://ace-compliance.com/blog/01kihon/01itaku/240728farmer.html