農振法の「三段表」とは?農用地区域の確認方法と読み方

農地に関わる実務のなかで、「農振法の三段表を確認してください」と言われて戸惑った経験はないでしょうか。三段表という言葉は、法律の条文を扱い慣れていないと、一体何を指しているのか分かりにくいものです。この記事では、農業振興地域の整備に関する法律(以下「農振法」)の「三段表」の正体と、その読み方、そして農用地区域を確認する際の位置づけを、実務レベルで整理して解説します。

三段表が特に必要になるのは、農用地区域からの除外(農振除外)を検討する場面です。除外の要件のひとつである「8年ルール」は法律本文には数字が書かれておらず、政令まで追わないと分かりません。ほかにも、ある土地が農用地区域に含まれるべき土地かを規模(10ヘクタール・2ヘクタールなど)から判断するとき、農用地区域内で造成や工作物設置などの開発行為をしようとして許可が要るか調べるとき、そして行政協議や稟議で制度の根拠を条文付きで示すときなどに、三段表が確実な拠り所になります。いずれも「法律だけでは答えが出ず、政令・省令まで見て初めて結論が出る」という共通点があります。

そもそも「三段表」とは何か

三段表を理解するには、まず日本の法令が持つ「階層構造」を押さえる必要があります。ひとつの制度は、法律だけで完結しているわけではなく、法律・政令・省令という三つの段階に分かれて定められています。

  • 法律:国会が制定する、制度の骨格となるルールです。
  • 政令(施行令):内閣が制定する命令です。施行令は、法律の具体的な施行に関わる大枠や基本原則を定めます。
  • 省令(施行規則):各省大臣が制定する命令で、施行令よりも下位に位置づけられます。施行規則は、法律・政令に基づいて具体的な事項や手続きを定めます。

農振法の場合、この三つは以下のように対応しています。いずれも昭和44年に制定されたものです。

段階正式名称制定
法律農業振興地域の整備に関する法律(昭和44年7月1日法律第58号)国会
政令(施行令)農業振興地域の整備に関する法律施行令(昭和44年9月26日政令第254号)内閣
省令(施行規則)農業振興地域の整備に関する法律施行規則(昭和44年9月26日農林省令第45号)農林水産大臣

「三段表」とは、この三つの法令を横に並べ、条文の対応関係を一覧できるようにした資料です。農林水産省が「農業振興地域の整備に関する法律三段表」という名称で正式に作成・公開しているもので、実際の資料も「法律/施行令/施行規則」の三段を左から並べた構成になっています。

なお、農地転用の場面で使われる「農地区分(の判定ステップ)」とは別の概念です。三段表はあくまで法令の条文どうしの対応を示す資料である、という点を最初に押さえておきましょう。

農振法の三段表はどこで入手できるか

農振法の三段表は、農林水産省の公式サイトで無料で公開されています。農村振興局が所管する「関係法令、通知、様式」のページからPDFで入手できます。

ここで実務上、最も重要な注意点があります。三段表は法令改正のたびに更新されるため、必ず「◯年◯月◯日現在」の基準日を確認することです。三段表の表題には現在時点の年月日が記載されており、農林水産省のページでも更新のたびに新しい版へ差し替えられます。古い版を参照したまま作業を進めると、改正内容を見落とすおそれがあります。

また、市販の書籍としても、法律・施行令・施行規則を三段で対照させた「三段対照表」形式の資料が刊行されています。ただし書籍は編集時点の内容で固定されるため、最新の改正を追う場合は農林水産省の公開版と併用するのが確実です。

三段表の読み方

三段表の読み方はシンプルで、左の法律から読み始め、「政令で定める」「省令で定める」という言葉が出てきたら、同じ行の右の列を見ます。すると、法律ではぼんやりしていた「規模」や「基準」が、右の列で「10ヘクタール」のように具体的な数字に変わります。左から右へ、ざっくりから具体へ。これが基本の読み方です。

「委任文言」がナビゲーションになる

法律の条文を読んでいると、「政令で定める規模」「農林水産省令で定める」といった表現が頻繁に登場します。これは「詳しい中身は下位の法令に委ねている」という合図です。この委任文言が出てきたら、隣の段(政令・省令)へ視線を移して読む——これが三段表を読む基本動作です。

具体例で見てみましょう。農振法では、農用地区域に含める土地のひとつとして「集団的に存在する農用地で政令で定める規模以上のもの」(法第10条第3項第1号)と定めています。ここで「政令で定める規模」とありますので、政令(施行令)に視線を移すと、施行令第6条に「十ヘクタール」と具体的な数字が定められています。

このように、法律で抽象的に示された枠が、政令・省令で具体的な数値や手続きへと落とし込まれていく流れを、三段表なら一目で追うことができます。

手順で追う:実際に目を動かしてみる

先ほどの「10ヘクタール」の例を、実際に三段表の紙面で目を動かす手順に分解してみましょう。三段表は左から「法律/施行令/施行規則」の順に並んでいますので、次のように読み進めます。

  1. まず左段(法律)を読む。第10条第3項第1号に「集団的に存在する農用地で政令で定める規模以上のもの」とあります。ここで「政令で定める規模」という委任文言に気づきます。
  2. 同じ行の中段(施行令)へ視線を移す。三段表では、法律の条文に対応する政令・省令が横並びに配置されています。中段をたどると施行令第6条があり、「法第10条第3項第1号の政令で定める規模は、十ヘクタールとする」と定められています。ここで「規模=10ヘクタール」が確定します。
  3. 委任がさらに続かないか確認する。この号ではこれ以上の委任はないため、ここで読み終わりです。

ポイントは、「法律を読む→委任文言を見つける→同じ行の右側の段を見る」という視線の動きを繰り返すことです。慣れてくると、条文番号を手がかりに該当箇所へ素早くたどり着けるようになります。

委任が政令からさらに省令へ続く例

委任は、法律から政令の一段だけとは限りません。政令からさらに省令へと二段階で委ねられているケースもあります。三段表が「三段」である意味が最もよく分かる場面です。

例として、農用地区域に含める土地のうち「土地改良事業等の対象地」を見てみましょう。法第10条第3項第2号は、土地改良事業またはこれに準ずる事業で「農用地の造成その他の農林水産省令で定めるものの施行に係る区域内にある土地」と定めています。ここでは政令ではなく、いきなり省令(施行規則)への委任が出てきます。

そこで右段(施行規則)へ視線を移すと、施行規則第4条の3に、その「農林水産省令で定める事業」の中身が列挙されています。具体的には、農業用用排水施設の新設・変更、区画整理、農用地の造成、埋立て・干拓、客土・暗きょ排水といった事業が、満たすべき要件とともに定められています。

このように、法律の一文の中に「政令で定める」と「省令で定める」が混在していることも珍しくありません。委任文言を見つけるたびに、それが政令への委任なのか省令への委任なのかを見極め、対応する段へ移動する——この作業を丁寧に繰り返すことが、条文を正確に読むうえで欠かせません。

図表:委任先は「政令」とは限らない(法第10条第3項の例)

法律の号委任文言委任先の段具体的な内容
第10条第3項第1号政令で定める規模施行令 第6条10ヘクタール
第10条第3項第2号農林水産省令で定めるもの(事業)施行規則 第4条の3用排水施設の新設・変更、区画整理、農用地の造成 等
第10条第3項第4号政令で定める規模施行令 第7条2ヘクタール

図表:委任文言をたどる読み方(例)

条文内容
法律第10条第3項第1号「集団的に存在する農用地で政令で定める規模以上のもの」
↓ 政令へ施行令 第6条規模=10ヘクタール
法律第10条第3項第4号農業用施設用地で政令で定める規模以上のもの
↓ 政令へ施行令 第7条規模=2ヘクタール

除外要件を三段表でたどる

もうひとつ、実務でよく参照される「農用地区域からの除外」の要件も、三段表で追うと理解が深まります。農用地区域内の土地を農用地区域から除外するための農用地利用計画の変更は、農振法第13条第2項に定める要件をすべて満たす場合に限って行うことができます。

その第13条第2項第6号には、「農業に関する公共投資により得られる効用の確保を図る観点から政令で定める基準に適合していること」とあります。この「政令で定める基準」を政令側でたどると、施行令第9条に、土地改良事業等の工事が完了した年度の翌年度の初日から起算して8年を経過した土地であることという基準が定められています。いわゆる「8年ルール」と呼ばれるものです。

このように、法律の条文だけを読んでいては見えてこない「8年」という具体的な要件も、三段表なら委任文言をたどることで確実に拾えます。

【補足】実際の土地が農用地区域か確認する方法

ここまで解説してきた三段表は、あくまで「制度の根拠となる条文」を読み解くための資料です。目の前の特定の土地が農用地区域(いわゆる青地)に含まれているかどうかは、三段表ではなく別の手段で確認する必要があります。混同しないよう、切り分けて押さえておきましょう。

確認の方法としては、農林水産省のeMAFF農地ナビで調べる方法があります。確認したい農地を選択し、「農振法区分」の表示内容を確認することで、その土地が農業振興地域内・農用地区域内(青地)に含まれているかどうかを判断できます。表示が「調査中」など判断が難しい場合は、市町村の農林部局へ問い合わせる形になります。

農用地区域内の農地は、農用地利用計画で指定された用途に供する場合を除き、原則として農地転用が認められません。転用が必要な場合は、まず農用地区域からの除外(農用地利用計画の変更)を行い、その上で農地法による転用許可を得るという順序になります。この除外・転用の可否を検討する土台として、前章までに見た三段表による条文理解が役立ちます。

まとめ

農振法の三段表は、法律・政令・省令という三つの段階を横並びで対照させ、制度を正確に読み解くための「地図」です。読み方のポイントは、次の二点に集約されます。

  • 左段(法律)から右段(省令)へ、抽象から具体へ読み進める。
  • 「政令で定める」「省令で定める」といった委任文言が出てきたら、隣の段へ移動して具体的な数値・手続きを確認する。

そして、三段表は「制度の根拠」を読むための資料であり、目の前の土地が青地かどうかはeMAFF農地ナビや市町村窓口で別途確認する——この役割分担を理解しておけば、農地手続きにまつわるニッチな疑問も、落ち着いて解きほぐせるようになります。三段表を使いこなせるようになると、農振法の条文が立体的に見えてくるはずです。

参考文献

農林水産省「関係法令、通知、様式」(農振法三段表 令和8年5月27日現在を掲載)
https://www.maff.go.jp/j/nousin/noukei/totiriyo/t_sinko/sinko_03.html
農林水産省「農業振興地域の整備に関する法律三段表(令和8年5月27日現在)」(PDF)
https://www.maff.go.jp/j/nousin/noukei/totiriyo/t_sinko/attach/pdf/sinko_03-41.pdf
農林水産省「農業振興地域制度の概要」
https://www.maff.go.jp/j/nousin/noukei/totiriyo/t_sinko/sinko_01.html
e-Gov法令検索「農業振興地域の整備に関する法律」
https://laws.e-gov.go.jp/law/344AC0000000058
e-Gov法令検索「農業振興地域の整備に関する法律施行令」
https://laws.e-gov.go.jp/law/344CO0000000254/
KEIYAKU-WATCH「法令とは?法律との違いや読み方のコツを解説!」(施行令・施行規則の位置づけ)
https://keiyaku-watch.jp/media/kisochishiki/hourei_yomikata/
岡山市「農業振興地域について」(eMAFF農地ナビでの農振法区分確認手順)
https://www.city.okayama.jp/jigyosha/0000012026.html