農振除外(農用地区域からの除外)申請の手順|要件と期間の目安

「農振除外」は、市町村が定める農業振興地域整備計画のうち、農用地区域(いわゆる青地)に指定された農地を、その区域から除外する手続きです。農地に建物を建てたい、売却・転用したいとお考えの場合、農振除外は農地法上の転用許可を受けるための前提手続きにあたります。本記事では、農林水産省の公表資料および農業専門メディアの解説記事に基づき、農振除外の制度上の位置づけ、要件、申請の手順、期間の目安、そして2025年以降の地域計画・目標地図との関係について解説します。

農振除外とは|農用地区域(青地)と農地転用の関係

農林水産省の資料によると、農業振興地域制度は階層的な仕組みで運用されています。農林水産大臣が基本指針を策定し、都道府県知事がこれに基づいて農業振興地域を指定し、市町村が具体的な「農業振興地域整備計画」を定めるという流れです(出典:農業振興地域制度の概要/農林水産省)。

このうち、市町村の農用地利用計画で指定された区域が、いわゆる「青地」(農用地区域)です。農林水産省の説明では、青地には次のような土地が含まれるとされています(出典:同上)。

  • 集団的農用地(おおむね10ha以上のまとまりのある農地)
  • 農業生産基盤整備事業の対象地
  • 農道・用排水路など土地改良施設の用地
  • 農業用施設用地(2ha以上、またはこれに隣接するもの)

一方、青地に含まれない区域は「白地」(農用地区域外)と呼ばれます。農林水産省は、白地地域について「本法(農振法)による開発規制は行われないが、農地法による転用許可が必要」と説明しています(出典:同上)。

つまり、白地の農地は農地法の転用許可のみで対応できますが、青地の農地はまず農振除外(農用地利用計画の変更手続き)を経なければ、農地転用の許可申請そのものができません。この「除外を経てから転用許可」という順序は、農林水産省の資料にも明記されています(出典:農業振興地域制度の概要/農林水産省)。

区分適用される制度転用時に必要な手続き
農用地区域内(青地)農振法(農業振興地域の整備に関する法律)農振除外(農用地利用計画の変更)→ 農地転用許可
農用地区域外(白地)農地法のみ農地転用許可のみ

出典:農業振興地域制度の概要/農林水産省 の記載内容をもとに作成

農振除外の要件

農振除外には、複数の要件をすべて満たす必要があるとされています。農業手続きに関する専門解説記事によれば、代表的な要件は次の6つです(出典:農業手続きドットコム「農業振興地域内の農地転用-農振除外と軽微変更の手続き-」)。

No.要件概要
1転用の必要性と適切性転用することが必要かつ妥当であり、他の土地では代替できないこと。具体的な転用計画があり、必要最小限の面積であることが求められます。
2地域計画への支障がないこと 
3農業上の効率的利用への支障がないこと農地の細分化や、周辺農地の日照・通風への悪影響を避けることが求められます。
4効率的な農業経営への農地集積の支障がないこと 
5土地改良施設への支障がないことため池、排水路、農道などの機能に影響を与えないこと。
6土地基盤整備事業の完了から8年以上経過していること 

出典:農業手続きドットコム「農業振興地域内の農地転用-農振除外と軽微変更の手続き-」(2024年9月17日公開)

このうち6の「8年」要件は、農林水産省の資料でも独立して確認できます。農林水産省は、農用地区域内の農地転用には事前に農用地利用計画の変更手続き(農振除外)が必要であり、その要件として「農業基盤整備事業完了後8年を経過しているものであること」などが求められるとしています(出典:農業振興地域制度の概要/農林水産省)。

また、農林水産省が公表している資料には、「効率的かつ安定的な農業経営を営む者により現に利用集積され、又はこれから利用集積されることが見込まれる」農地について、除外を厳格化する方針が示されています。これは平成21年(2009年)の農地法改正時点の資料に基づく記載であり(出典:改正農地法の概要/農林水産省、平成25年6月末時点の資料)、「担い手に利用集積されている、または見込まれる農地は除外を認めにくい」という考え方自体は、2025年に始まったものではなく、2009年の制度改正の時点で既に位置づけられていたものです。後述するとおり、この方向性は2025年の地域計画・目標地図の運用強化によって、実務上さらに重視されるようになっています。

農振除外申請の手順

農業専門メディアの解説記事によれば、農振除外の手続きは概ね次の5つのステップで進みます(出典:精密農業.com「地域計画内の農地を転用するには?2025年4月からの新手順・除外申出・注意点を農家向けに解説」)。

ステップ内容
1対象農地の区分・目標地図上の位置づけの確認
2除外申出書・添付書類の作成
3市町村・関係権利者との事前調整
4公告・縦覧(約2週間)
5農業振興地域整備計画の変更・除外決定

出典:精密農業.com「地域計画内の農地を転用するには?」の記載内容をもとに作成

申出にあたって必要となる書類としては、農業専門の実務解説記事において次のようなものが挙げられています(出典:農業手続きドットコム)。

  • 除外申出書
  • 土地全部事項証明書
  • 案内図
  • 公図の写し
  • 土地利用計画図
  • 名寄帳の写し
  • 選定理由書 ほか

【要注意】必要書類は市町村や案件の内容によって異なる可能性があります。実際の申請にあたっては、必ず申請先の市町村・農業委員会に最新の必要書類をご確認ください。

申請から許可までの期間の目安

農業手続きに関する専門解説記事では、農振除外の手続き期間は目安として6か月以上とされています。これに対し、要件を満たしたまま用途のみを変更する「軽微変更」の場合は1〜3か月程度とされています(出典:農業手続きドットコム、2024年9月17日公開)。

また、精密農業.comの解説記事でも、除外申出から許可までは、公告・縦覧期間(約2週間)を含めて「通常数か月」かかるとされています(出典:精密農業.com「地域計画内の農地を転用するには?」)。

いずれの情報源も、実際の期間は市町村の受付タイミングや案件の内容によって変動するとしています。本記事で示した期間はあくまで目安であり、【要確認】具体的な受付回数や審査スケジュールは、申請を検討している市町村の農業委員会へ直接ご確認ください。

費用について

農振除外にかかる費用は、案件の内容や依頼先によって異なります。具体的な金額を確認したい場合は、事前に地元の農業委員会や行政書士事務所へ直接お問い合わせいただくことをおすすめします。

2025年以降の動向|地域計画・目標地図との関係

農地を取り巻く制度は、2025年前後に大きな見直しが行われています。農林水産省は2025年6月27日、「農用地等の確保等に関する基本指針」を変更し、令和6年6月の食料・農業・農村基本法および農振法改正を踏まえた新たな考え方を追加しました(出典:農林水産省プレスリリース「『農用地等の確保等に関する基本指針』の変更について」2025年6月27日)。

この変更では、令和17年(2035年)における全国の農用地確保目標を390万haと設定しています(令和5年時点は396.7万ha)。あわせて、各都道府県における農用地確保目標の設定基準も改正されました(出典:同上)。同日付で「農業振興地域制度に関するガイドライン」も改正されています(出典:農林水産省「関係法令、通知、様式」ページ)。

これと並行して運用が進められているのが、「地域計画」と「目標地図」です。精密農業.comの解説記事によれば、地域計画は「地域の農業の将来ビジョンと10年後の農地利用の姿」を示す市町村の計画であり、目標地図はそのうち「地域内の農地を一筆ごとに、将来誰が耕作するかを色分けして示した」ものです。2025年4月からは、農地バンク経由での権利移動が原則化されました(出典:精密農業.com「地域計画・目標地図とは?農家が知っておくべき仕組み・影響・対応方法をわかりやすく解説」)。

先端農業マガジンの報告によれば、2025年4月末時点で全国1,615市町村・18,894地区において地域計画の策定自体は完了しました。ただし、実際に農地を集約化できたのは約1割にとどまり、多くの農地では受け手(担い手)が未定のまま残っているとされています(出典:先端農業マガジン「地域計画(人・農地プラン)策定状況2025|全国1,615市町村・18,894地区の現在地」2026年6月29日)。

この目標地図は、農振除外の実務にも影響しています。精密農業.comの解説記事では「転用を申し出た場合、その担い手の耕作計画に影響が出るため、地域計画の変更が認められにくい傾向があります」と説明されており、目標地図上で特定の担い手(耕作者)が割り当てられている農地は、除外の申出をしても認められにくいとされています(出典:精密農業.com「地域計画内の農地を転用するには?」)。

つまり、2025年以降に農振除外を検討する場合は、前述の要件を満たすかどうかの確認に加えて、対象農地が目標地図上でどのように位置づけられているかを事前に確認することが、実務上の重要な出発点になっていると言えます。

除外が認められにくいケース・注意点

ここまでの内容を踏まえ、除外が認められにくいとされるケースを整理します。

  • 土地改良事業の完了から8年を経過していない農地(出典:農業振興地域制度の概要/農林水産省、農業手続きドットコム)
  • 効率的かつ安定的な農業経営を営む者に利用集積されている、または見込まれる農地(出典:改正農地法の概要/農林水産省)
  • 目標地図上で特定の担い手が割り当てられている農地(出典:精密農業.com「地域計画内の農地を転用するには?」)
  • 転用の必要性・妥当性が認められない場合や、他の土地で代替可能と判断される場合(出典:農業手続きドットコム)

【要注意】個別の農地が実際に除外可能かどうかは、市町村・農業委員会の判断によるところが大きく、本記事の内容だけで可否を断定することはできません。検討にあたっては、必ず対象農地の所在する市町村の農業委員会にご相談ください。

よくある質問

Q. 農振除外と農地転用は、どちらを先に申請すればよいですか?
A. 農用地区域内(青地)の農地の場合、農林水産省の説明では農地転用の許可申請の前に、農用地利用計画の変更手続き(農振除外)が必要とされています。区域外(白地)の農地であれば、農振除外の手続きは不要で、農地法の転用許可のみで対応するとされています(出典:農業振興地域制度の概要/農林水産省)。

Q. 除外までどのくらいの期間を見ておけばよいですか?
A. 目安として6か月以上とする実務解説記事があります(出典:農業手続きドットコム)。ただし審査スケジュールは自治体により異なるため、事前に地元の農業委員会へご確認ください。

Q. 土地改良事業が完了したばかりの農地でも申請できますか?
A. 農林水産省の資料では、土地改良事業などの基盤整備完了から8年を経過していない農地は、原則として除外の対象にならないとされています(出典:農業振興地域制度の概要/農林水産省)。

まとめ

  • 青地(農用地区域内)の農地を転用するには、まず農振除外(農用地利用計画の変更)が必要です。
  • 除外には「転用の必要性」「地域計画への影響」「8年要件」など、複数の要件をすべて満たす必要があります。
  • 手続き期間は目安として6か月以上とされています。
  • 2025年の制度改正と地域計画・目標地図の運用強化により、担い手が割り当てられた農地は除外がより認められにくくなっています。
  • 費用は案件や依頼先によって異なるため、地元の農業委員会や行政書士事務所への確認が必要です。

まずは対象の農地が青地か白地か、そして目標地図上でどのように位置づけられているかを、市町村の農業委員会に確認することから始めることをおすすめします。

参考文献

農業振興地域制度の概要:農林水産省
https://www.maff.go.jp/j/nousin/noukei/totiriyo/t_sinko/sinko_01.html
関係法令、通知、様式:農林水産省
https://www.maff.go.jp/j/nousin/noukei/totiriyo/t_sinko/sinko_03.html
「農用地等の確保等に関する基本指針」の変更について:農林水産省(2025年6月27日)
https://www.maff.go.jp/j/press/nousin/noukei/250627.html
改正農地法の概要:農林水産省
https://www.maff.go.jp/j/keiei/koukai/nouchi_seido/attach/pdf/nouchi_sandan-201.pdf
農業手続きドットコム「農業振興地域内の農地転用-農振除外と軽微変更の手続き-」(2024年9月17日)
https://www.nogyo-tetsuduki.com/noushin-tenyo/
精密農業.com「地域計画内の農地を転用するには?2025年4月からの新手順・除外申出・注意点を農家向けに解説」(2026年3月3日)
https://seimitsu-nougyo.com/regional-plan-and-farmland-conversion/
精密農業.com「地域計画・目標地図とは?農家が知っておくべき仕組み・影響・対応方法をわかりやすく解説」(2026年3月3日)
https://seimitsu-nougyo.com/regional-planning-target-map/
先端農業マガジン「地域計画(人・農地プラン)策定状況2025|全国1,615市町村・18,894地区の現在地」(2026年6月29日)
https://smartagri.jp/p/5710/